奇跡を起こすオールラウンダー 〈男子日本代表 渡邊 雄太選手〉

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 203cmのオールラウンダー渡邊 雄太選手は、男子日本代表の未来を担う若手のホープだ。
 2012年FIBA ASIA男子U-18選手権では、世界への切符を懸けた3位決定戦でイランに83-87と惜敗。17歳から日本代表候補に選出され、高校卒業後の19歳の誕生日を迎える前にフィリピンで行われたFIBA ASIA男子選手権への出場を果たす。試合に出れば果敢にアタックし、少なからずスタッツを残したが、まだまだ思うようなプレイタイムはもらえなかった。黒星続きのアジア9位という不甲斐ない結果、そして自身もチームに貢献できず、悔しい思いしか残っていない。日本代表を強くしたい、そのためにも自分が強くなければいけない。そんな使命と責任感を抱きながら渡米した。

 あれから3年。
「今後は、彼がやりやすいような日本のバスケットスタイルになる」と長谷川 健志ヘッドコーチは明言し、チームの軸とした戦略が練られている。「日本のビッグマンはベテランに達し、また210cm以上ある選手がいるわけでもなく、フィジカルが強いわけでもない。今後は3番ポジション(スモールフォワード)のサイズアップをしていきたい。そこに雄太が入ることで、リバウンド力やブロックショットの脅威が生まれる。どんな選手にもマッチアップできるディフェンスの速さやオフェンスの走力があり、シュート力もまだまだ向上する可能性を持っている。彼のオールラウンダーさは日本にとってプラスになる」とヘッドコーチの期待は高い。

 ジョージ・ワシントン大学ではスモールフォワードやシューティングガードを任されている渡邊選手。代表候補選手の中で4番目の高さを誇る203cmながら、日本代表でも同じポジションが用意された。
「多少インサイドもやらなければいけない時もありますが、自分がやりたいポジションは2番(シューティングガード)や3番(スモールフォワード)であり、そこでプレイする機会が増えると思いますし、アメリカと同じポジションができるのはありがたいです」
 シューターとしての精度を上げているオールラウンダー。NCAAルールの方が3Pシュートラインが短かったり、ボールの違いもあるため、「本番まで時間もないのでボールや距離感に慣れるように努力して、しっかり上げていきたい」と話しており、練習前後にはひたすらシュートを打っている。

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 長谷川ヘッドコーチが期待するディフェンスでは、第一線からプレッシャーをかけていく。国内ではクイックネスで相手を抜いて行く田臥 勇太選手に対し、その長い手足で行く手を阻む。自分より小さい選手とのマッチアップに自信を見せた。
「(ジョージ・ワシントン大学の)コーチにはディフェンスをすごく評価されていて、相手のエースをマークする機会が増えました。ポイントガードがエースの時は、前からマッチアップすることも多かったです。小さい選手に対するディフェンスは経験済みです」

 昨年は学業があったため、第2次強化合宿までの練習参加に留まった。しかし今回は大学にも了承を得て、「FIBA男子オリンピック世界最終予選」へ向かう最終メンバー12名に入り、思いっきりバスケットができている。
「明確な目標があるとモチベーションも変わり、良い緊張感で練習に取り組めています。それは僕だけではなく、他の方々も一緒です。もっともっと細かく詰めてやっていかなければいけないですが、オリンピック予選が間近に迫っているのはすごく楽しみです」

 アメリカではフリーになったり、思いきり行ける時は必ずダンクシュートしなければならない。それはルールではなく、マナーとでも言えば良いのか、普通にレイアップシュートで終わらせてしまえばチームメイトからブーイングが起こり、コーチから咎められる。そんな環境に身を置く渡邊選手は、合宿中のスリーメンでは全てダンクシュートでネットを揺らしていた。

「ダンクに行ける時はしないといけないと思っています。国際試合で対戦する選手たちの方が身長は高く、横幅もあって、さらに身体能力が高い中で、体格で劣る僕たちは簡単にレイアップを打てないです。僕はダンクに行ける時は、とにかくダンクすることを意識して試合にも臨んでいきたいです」

 国内リーグを見ても、日本人選手がダンクに行く姿を見る機会は希である。だが、相手を振り切りダイナミックなダンクを決めまくる渡邊選手。3日目になると、他の選手たちも負けじとフリーであればダンクを見舞い、チームに良いシナジーを生み出している。

 北京オリンピック(2008年)をテレビで観ていた中学生の頃、NBAのスター選手たちが躍動する夢舞台に立ちたいという小さな夢を持った。2013年9月、東京でオリンピック開催が決まったことで、目標として強く意識するようになる。
「自分も日本代表として、オリンピックに出たいと思いました。昨年のアジア予選には出られませんでしたが、仲間たちが最終予選の切符を獲得してくれて、まだリオへ行けるチャンスが今も残っています。オリンピックに対する意識はものすごく変わりました」

 川淵 三郎会長には「奇跡を起こせ」と発破をかけられている男子日本代表チーム。そのプレッシャーをはね除ける強い信念を持って世界に挑む。

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渡邊 雄太

  • 1994年10月13日生
  • 203cm/89kg/スモールフォワード
  • 香川県出身
  • 尽誠学園高校~セント・トーマス・モア・スクール~ジョージ・ワシントン大学 2年
  • 平成28年度男子日本代表選手
  • 平成25年度男子日本代表選手(第27回FIBA ASIA男子バスケットボール選手権大会 出場)
  • 平成24年度男子U-18日本代表選手(第22回FIBA ASIA U-18男子バスケットボール選手権大会 出場)
  • 平成23年度男子3×3日本代表選手(第1回ユースゲームス 出場)
  • 平成23年度男子日本代表選手(第33回男子ウィリアム・ジョーンズカップ 出場)