負けず嫌い 〈女子日本代表 本川 紗奈生選手〉

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 日本代表に選ばれるような選手たちは、誰しもが負けず嫌いである。負けたくない一心で努力を続け、ほんの少しの運が作用し、日の丸のユニフォームを手にすることができる。
 2年前の2014年。2つの国際大会が同時期に開催されるとあり、女子日本代表チームは2チーム編成で臨まねばならなかった。一つは、アジアチャンピオンとしてFIBA世界選手権に挑むトップチーム。もう一つは、アジア競技大会で経験を積ませる若手チーム。本川 紗奈生選手が初めて日本代表に選出された時は、後者の若い方のチームだった。

 大会前の2014年7月、オーストラリア代表とモザンビーク代表を招待し、2つの日本代表とともに4チームで行われた国際親善試合。組み合わせにより、トップチームvs若手チームの日本代表同士の対戦が実現した。パフォーマンス次第ではトップチームへの昇格もあり得ることを内海 知秀ヘッドコーチは話しており、モチーベーションが上がる。血気盛んな負けず嫌いたちにラストチャンスが巡ってきた。気迫で上回る若手チームがリードしていく展開だったが、最後は実力でねじ伏せられ78-86と惜敗。若手チームの奮闘は会場を盛り上げたが、昇格する選手は一人もいなかった。
「あの試合はすごく燃えていました。絶対に負けないという気持ちが強く、逆になんで負けるのかが分からないとさえ思っていました」

 強気な本川選手はアジア競技大会では全試合先発出場を果たし、銅メダルを獲得。翌年2015年、晴れて日本代表に選出される。オリンピック出場を決めたアジア予選ではチームハイとなる平均13.3点を挙げ、一気に日本代表の主役に躍り出た。

motokawa2 ”日本の斬り込み隊長”として、チームを勢いづける本川選手。しかしWリーグでのセミファイナル最終戦で怪我に見舞われた。

 「ガンガン攻めること」を信条とする本川選手ゆえに、日本代表からWリーグまで休むことなく走り回ったことで足を酷使していた。昨シーズンのWリーグ中から痛みを感じていた足が、負ければ終わる富士通とのプレーオフのセミファイナル第3戦の開始早々、ついに限界にきてしまった。抱えられながらコートを後にしていく姿に、オリンピックに出られるのか…という不安がよぎる。
「すぐにリオまでに復帰できるかを聞いたら、感覚は戻らないと言われました」

 今年3月、日本代表候補選手が発表され、4月9日より強化合宿がスタートした。しかし万全な状態とはほど遠く、完治できるかどうかさえわからない状況に、不安と自問自答を続けていた。
「どうしてもオリンピックに出たかった。あの頃は、いろんな人からいろんな意見を言われて迷いしかなかったです。だけど、絶対に日本代表のスタートの座は譲りたくない。ものすごい葛藤をしてました」

 合宿初日、本川選手の姿があり、練習にも参加していた。驚異の回復力だと感じていたが、実は周りに悟られないように一人で葛藤する日々は継続中であった。
「みんなの動きを見てるとオフシーズン明けでもしっかり戻っていました。でも、自分だけヨチヨチ歩きのような状態でプレイしていて、すっごい悔しかった。ドライブができないし、18人の選考の時も周りから『なんかいつもと違うよね』と言われ、すごく悔しかったんです」

 武器であるドライブが思うように出せない。それ以上に弱音だけは吐きたくない。怪我を治すためには、休むことも選択肢としてあったはずだ。しかし、「休みますなんて絶対に言いたくない」と12名が決まった後も痛みに耐えながら、孤独な戦いを続けていた。
 オリンピックまで3週間を切った南米遠征で向かう時点でも、ジンジンする痛みは抜けていない。飛行機移動時には気圧のせいで足が腫れてしまうそうだ。

 「今も辛い」
 苦しかった4ヶ月間を振り返った後、負けず嫌いがボソッと本音をのぞかせた。痛いことだけではなく、信頼してくれるコーチや仲間たちのために全力を尽くせるかどうか分からない状況が辛かった。

「よく耐えてきたと思うし、どうしてなんだろうと考えると、コーチ陣が練習や試合に出し続けてくれて、期待して待っていてくれたおかげだと思っています。怪我して思うようなプレイができないのに試合に出ていいのかな、代表から落ちてもしょうがないという思いはずっとありました。でも、絶対にスタートの座を外されたくないから必死に頑張るしかなかった。申し訳ない気持ちもあった。オフェンスができないならば、ディフェンスでスティールしたり、プレッシャーをかけたり、できることを頑張った。期待してもらってたのが一番大きかったし、うれしかったです。コーチ陣には本当に感謝しています」

 耐え忍んだこの期間があったことで、オリンピックに立ち向かうだけのメンタルは自ずと鍛えられた。
「自分はすごい強いと思うんです。だけど、結構泣き虫。一人で泣いて解消してました」
 大変だった日々を乗り越え、血と汗と涙の結晶をオリンピックの舞台で爆発させるだけだ。先頭を走って、チームを引っ張る”斬り込み隊長”が、世界をあっと驚かせてくれるだろう。

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本川 紗奈生

  • 1992年4月2日生
  • 176cm/65kg/シューティングガード
  • 北海道出身
  • 遠矢中学校~札幌山の手高校~シャンソン化粧品 シャンソンVマジック
  • 平成28年度女子日本代表選手
  • 平成27年度女子日本代表選手(第28回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会 出場)
  • 平成26年度女子日本代表選手(第17回アジア競技大会 出場)
  • 平成23年度女子U-19日本代表選手(第9回FIBA U-19女子バスケットボール世界選手権大会)
  • 平成22年度女子U-18日本代表選手(第20回FIBA ASIA U-18女子バスケットボール選手権大会 出場)