このチームでバスケットをできたことが楽しかった 〈女子日本代表 吉田 亜沙美キャプテン〉

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 リオデジャネイロオリンピックでの「メダルへの挑戦」は志半ばで終わってしまった。しかし、世界2位でありロンドン大会の銅メダリストのオーストリアを苦しめ、世界4位のフランスを破り、アトランタ大会以来となる20年ぶりの決勝トーナメント進出を果たした。フランス、トルコとともに3勝2敗で3チームが並び、得失点差の関係で不運にも4位となる。準々決勝、早々と訪れたアメリカ戦は、64-110で敗れた。点差は離されたが、前半は日本が粘りを見せて2点差まで追い上げたことで、世界No.1チームを本気にさせることはできたはずだ。

 「人生観も、バスケット観も変わりました。夢の道を歩かせてもらって、本当に仲間たちに感謝しています」
 キャプテンの#12吉田 亜沙美選手が「夢の道」と表現したオリンピック開会式。楽しく、幸せなひと時であったとともに、「遅くなりましたが、親孝行ができたと思います」と現地に応援にかけつけた両親への感謝の気持ちを述べた。2008年北京大会から挑戦し続けてきたオリンピックに、3度目の正直でようやくたどり着いた。初めての「夢の道」を歩いたことで浮き足立つことなく、テンションを上げて臨んだ開幕戦。勝負どころで吉田選手がスティールから速攻につなげて突き放し、ベラルーシを相手に77-73で粘り勝ち、幸先良いスタートを切ることができた。

 内海 知秀ヘッドコーチは、「1戦目と2戦目、これをしっかり戦えるかどうかで流れをつかめるかどうかが決まる」と言っていた。開催国ブラジルと対戦した2戦目は、危なげない試合展開で82-66と快勝。この試合をきっかけに地元ファンを味方につけた。トルコ、オーストラリアに敗れ、2勝2敗で迎えた予選ラウンド最終戦のフランス戦では、観客席から「吉田コール」が沸き起こる。コート上の吉田選手の耳にも、そして心にもしっかりと届いていた。
 「本当にうれしかったですし、ブラジルのファンの方もすごく温かく日本のバスケットを応援してくださいました。私たちは、個人技ではどうしても負けてしまうとは思いますが、チーム力でぶつかっていくという強い気持ちを持って臨んだオリンピックでした。まずは自分たちが楽しむつもりで毎試合を戦い、見ている方にもそれが伝わったのは日本にしかできなかったことだと思います」
 平均身長177cm。170cm台は日本だけであり、5cm以上高いライバルたちに立ち向かう姿を会場のバスケットファンは温かく応援してくれた。それは吉田選手がオリンピックを通じて目指していたことであり、現地だけではなくアカツキファイブの勇気と感動は日本にもしっかりと届いている。

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 WNBA昨シーズンのMVP、エレーナ・デナ・ダン選手。NBAからのドラフトの噂が絶えない203cm、ブリトリー・グライナー選手。さらに、渡嘉敷 来夢選手と同じシアトル・ストームのチームメイトであり、今シーズンのWNBA新人王の呼び声高いブレアナ・スチュワート選手。オリンピック初出場はこの3人だけ。残る9人はロンドン大会のゴールドメダリストたち。実績も名声も世界に名を轟かせているスーパースター集団であり、まさに“ドリームチーム”。
 #14本川 紗奈生選手が先制するも、点差は引き離されていく。しかし第2ピリオド終盤には、#7栗原 三佳選手と吉田選手の3Pシュートで追い上げていき、2点差まで迫った。
「アメリカを本気にさせたというのは日本の強さでもあったとは思いますが、後半の入りの部分で一気に20点差に開かれてしまったのは、日本の弱さでもあったと思います。世界No.1の素晴らしいチームと試合することができたというのはすごく良い経験になりましたし、私たちの今後のバスケットボール人生にとっての財産になったと思います。シューティングのようにあれだけシュートを決められてしまい、本当に強かった。ただそれだけです」
 2Pシュート成功率は66.7%、3Pシュートも変わらず61.1%と驚異的な確率でシュートを決めていったアメリカ。日本は2Pシュート32.0%、3Pシュート38.1%だった。

 スーパースターたちは吉田選手を称えるようにハグし、アメリカのジノ・アウリーマ ヘッドコーチからは何か言葉をかけられた。それは吉田選手だけの胸にしまってある。最後のコート上での挨拶を終えた後、涙を見せた。
「悔しい思いが一番ですが、オリンピック期間中は充実した気持ちでバスケットができていましたし、このチームでバスケットをできたことが楽しかったです。1試合でも多くチームメイトと試合をしたかったという気持ちがありました。そして何よりも、会場に応援にきてくれている家族やファン、チームスタッフだったり、勝っても負けても応援してくれる人たちの存在が気持ちを熱くさせてくれて、支えになっていました。色んな感情が入り混じった涙でした。ここまでやってきて良かったという達成感や満足感が多い中、メダルを狙いに行けたという瞬間が見えたという部分もあったので、悔しさもありました」

 メダルが見えた瞬間とは、第4ピリオドの途中まで勝っていたオーストラリア戦を逃したことだった。
「あの試合は勝ちゲームだったと思います。そこに勝っていれば1位通過できていたと思いますので、そこがポイントガードとしてのゲームメイクミスでした。本当に、簡単にメダルに届かないからこそ、みんなで一致団結して勝ちにいきたいという気持ちが強くなりましたし、その思いを引っ張っていけなかったことは本当に悔しいです。新たな課題として、ゲームメイクをもっともっと磨いていかなければならないです」

 大会前からリオが集大成であり、2020年東京大会は若い選手たちに託すという言葉を残してきた吉田選手。初めてのオリンピックでの戦いを終え、「満足のいく結果が得られれば良かったのですが、メダルまでもう少しであり、見え隠れした瞬間があったので、やっぱりメダルを獲って満足して帰りたかったです。ただ、東京オリンピックは若い選手たちがこれから良い経験をして、しっかりメダルを勝ち取ってもらいたいと思っていますの。私はまた新たに違う目標を今後は見つけながら大好きなバスケットができれば良いかなと思っています」と話し、現段階で東京オリンピックに対する明言は避けた。

 今年で29歳を迎える吉田選手の4年後は、アメリカのスーパースターたちよりも若い。既に3つの金メダルを手にしている#12ダイアナ・トラージ選手は34歳であり、日本戦に先発出場し19得点を挙げ、吉田選手をマークした。アメリカの平均年齢は30歳だ。日本一のポイントガードである吉田選手も、オリンピックに出たからこそ新たなる課題点が見つかったと話しており、メダルという忘れ物もしている。渡嘉敷選手とのホットラインに手応えを感じるとともに、まだまだ成長できると考えているならば東京オリンピックでもその勇姿を見続けたいが…。
「これからWリーグを戦っていく中で気持ちの変化もあるとは思いますし、今後の目標についてはリーグ戦を重ねていく上でしっかり考えていきたいです」
 
 アメリカ戦を終え、平均8.5本を記録している吉田選手はアシストランキング現在1位。2位の#7ペニー・テイラー選手は平均5.5本と差は開いているとともに、オーストラリアも準々決勝で敗れている。3位はアメリカのバード選手の5.0本であり、吉田選手がアシスト王になる可能性は高く、まだまだオリンピックでの楽しみは終わらない。